家庭教師として働く方の多くが所得税に関する確定申告を行っていますが、その時に気になるのが「経費」ではないでしょうか?業務に使用する物品の購入額を経費として計上することで、所得税を軽減する節税効果があるので、必ず知っておきたい知識です。
家庭教師が経費計上する時に注意すべきことや、経費として計上できる可能性のあるものを、現役家庭教師が徹底解説していきます。
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家庭教師が経費計上する時に注意すべきこと
はじめに、家庭教師が経費計上する時に注意すべきことを解説していきます。
この章はあくまで「確定申告をしたことがなく、経費がどんなものか分からない」方に向けているので、必要のない方は次の章へと進んでしまって問題ありません。
勘定科目を理解する
自分で購入した物品、利用したサービスの出費を経費として計上するには、「勘定科目」について知っておく必要があります。詳しくは、以下を参考にしてください。
勘定科目とは、会社の取引による資産・負債・資本の増減、および費用・収益の発生について、その性質をわかりやすく記録するために必要な分類項目の総称です。会社を出入りする現金につけられた、見出しのようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。
ご覧のように、勘定科目とは「お金の出入りを分かりやすくする」ために設定し、特に経費計上の場合は「この計上がどんなモノやサービスに利用されたのか」を一目で分かるようにしてくれます。
例えば、家庭教師業務に必要なノートを購入したとしましょう。このノートの勘定科目は一般的に「消耗品費」に該当するため、「経費の中の消耗品費」としてまとめておきます。
そして、確定申告の時に各勘定科目でかかった費用を書類にまとめ、それを申告時に税務署へと提出することで経費計上を行います。こうすることで、「どのようなモノにどれだけの経費を使ったか」が一目で分かるようになるのです。
以上が経費計上の大まかな流れになります。
なお、勘定科目には消耗品費、旅費交通費、水道光熱費など、「一般的によく使用されるもの」がありますが、自分で自由に設定することも可能です。ポイントは「毎年一貫した勘定科目で経費計上する」ことなので、使用する勘定科目をコロコロ変えるなど、一貫性がない計上は控えましょう。
証拠書類を用意する
確定申告で経費計上する時は、業務に必要な物品を購入した、もしくはサービスを利用したことを証明する「証拠書類」を保管しておく必要があります。確定申告の時に提出する必要はなく、あくまで保管しておくだけで問題ありません。
領収書がポピュラーな証拠書類ですが、一般的には以下の内容が記載されていることが証拠書類の条件です。認められる可能性が高い証拠書類の具体例とあわせて以下にまとめてみました。
【証拠書類の条件】
- 支払った日付
- 支払った人の名前や会社名
- 支払い金額
- 但し書き
- 支払い受けた人の名前や会社名と所在地
【証拠書類の具体例】
- レシート
- 出金伝票
- クレジットカード利用伝票
- ATMの振込明細書や通帳の記録
- インターネット通販の購入確認メールのプリントアウト
- パーティーや冠婚葬祭の案内状
- 祝儀
家庭教師は仕入れや接待はほとんど行わず、購入したものをそのまま経費にすることがほとんどなので、レシートやクレジットカードの利用伝票を証拠書類として使用することが多いはずです。
したがって、店舗で購入した場合は、現金なら領収書かレシートを、クレジットカードや電子マネーなら利用伝票を、それぞれ証拠書類として保管しておきましょう。
インターネット通販の証拠書類は?
インターネット通販で業務に使う物品を購入する方も多いはずです。領収書やレシートの発行を基本的に行わないインターネット通販の場合、どのように証拠書類を揃えれば良いのでしょうか?
そんな時は、取引確認メール、あるいはマイページの中にある、
- 日付
- 商品名
- 金額
これらの情報が記入されたページのスクリーンショットを印刷し、これを証拠書類とできる可能性があります。
インターネット通販だからといって経費として計上できないわけではないので、業務に必要な物品を購入した場合は、必ず証拠書類を保管しておきましょう。
「按分(あんぶん)」を使って正確に計上する
家庭教師の経費として多くの方がイメージするのが、授業に使用する文房具やテキスト、オンラインレッスンならパソコンやタブレットなど、「授業に使用する物品」ではないでしょうか?
しかし、実際には、以下に示すようなものも経費として認められる可能性が大いにあります。
- お客さま宅までのガソリン代
- 車の購入代金、維持費
- (自宅でオンラインレッスンを行っている場合の)自宅の光熱費
- (自宅でオンラインレッスンを行っている場合の)自宅のインターネット料金
ガソリン代や車代、光熱費やインターネット料金は毎月出ていく固定費であり、なおかつ数千円〜数万円と金額も大きいため、これらを経費にできれば大きな節税効果が期待できるので、積極的に経費として計上すべきです。しかし、仮に業務に使用していても「全額を経費にできない」点には注意すべきです。
たとえば、一カ月の間に10,000円、ガソリン代がかかったとしましょう。しかし、このガソリン代の中には家庭教師として働いている分の他に、プライベートで使用する分も入っているはずです。
したがって、もし、ガソリンを業務に半分使用しているなら、ガソリン代の総額10,000円のうち、実際に業務に使用した50%の5,000円を経費として計上することができます。このような考え方を按分(あんぶん)、50%のような割合のことを按分比率と呼ぶので、覚えておきましょう。
家庭教師が経費計上できるものを勘定科目別に徹底解説
ここからは、家庭教師が経費計上できる可能性があるものを紹介していきます。それぞれの勘定科目も解説しているので、経費計上の参考にしてください。
文房具
家庭教師業務に不可欠なノート、ペン、消しゴムなどの文房具は「消耗品費」に該当します。
家庭教師を業務として行っていると、文房具の消耗は非常に激しいので、しっかりと計上しておきたい経費です。
テキスト、教材
授業の時に必ず使うのが問題集や参考書といったテキストや教材ですが、これは「新聞図書費」に該当します。
商品によっては一冊で大きな経費になるので、節税を考えたら必ず経費として計上しておきたいところです。
自己研鑽用の書籍
家庭教師として働いていると、各科目の知識や教育に関することを書籍を通して学ぶ機会が多いです。授業に直接使用するテキストだけでなく、自分の勉強のために購入した書籍も「新聞図書費」に該当します。
「業務に関係がある書籍」が該当するので、娯楽用の小説や漫画はくれぐれも経費計上しないように。
プリンター
授業用の資料を作成する目的で購入したプリンターも経費になります。勘定科目は「消耗品費」になるので、忘れずに計上しましょう。
なお、プリンターをプラベートにも使用する場合、業務とプライベートで按分する必要があるので、按分比率を適切に設定し経費計上を行ってください。
セミナー参加費
家庭教師としての実力を高めるために、セミナーや勉強会に参加することもあるでしょう。この場合は、「研修費」という勘定科目を作成して仕分けを行いましょう。
なお、セミナーに参加するためにかかった交通費や宿泊費は「旅費交通費」に、書籍は「新聞図書費」に、飲食費は「交際費」に該当するので、しっかり分けて計上してください。
車関係
訪問型の家庭教師業務に車を使用している方は、車に関係する費用も経費計上できます。勘定科目は複雑なので、以下にまとめました。
費用 | 勘定科目 |
---|---|
車検 | 修繕費、車両費 |
事務手数料 | 支払い手数料、雑費 |
重量税 | 租税公課 |
自賠責保険料 | 保険料 |
法定諸費用 | 雑費 |
自動車税 | 租税公課 |
燃料 | 燃料費、車両費、旅費交通費、消耗品費 |
タイヤ交換など | 修繕費 |
その他消耗品 | 消耗品費 |
参考:車にかかる税金の勘定科目はどれ?按分の方法についても解説!
以上に加え、車両を購入した場合は「減価償却費」として経費計上することになるので、一般的な経費とは異なる計上方法を行います。新車と中古車で計上方法が異なるので、この点に注意してください。
また、業務以外にプライベートで車を使用する場合、按分を必ず行いましょう。按分比率の設定方法は、
- 走行距離
- 走行回数
- 利用時間
この3つを利用しますが、最も簡単で分かりやすいのが「走行距離」に基づいた按分です。業務に〇〇Km、プライベートに〇〇Kmと計測し、これを割合にすれば簡単に按分比率を設定できます。
授業準備のためのカフェ、ファミレス代
授業準備のために訪れたカフェやファミレスでの飲食費も経費計上できます。勘定科目は「会議費」です。
もちろん、業務に必要な訪問、利用でないと経費にはならないので、全てのカフェやファミレス代を経費にできるわけではありません。あまりに頻度が高かったり、度を超えた飲食の場合は、経費として認められない可能性が高いでしょう。
パソコン
多くの家庭教師にとってパソコンは仕事をする上で必須の道具です。訪問型家庭教師の場合、資料の整理や成績の管理などの雑務を行う上で活用できますし、オンライン家庭教師の場合は授業そのものを行うために必要。
そんなパソコンは、実は購入価格で勘定科目や計上方法が異なります。10万円未満で購入した場合は「消耗品費」として、10万円以上なら固定資産の中の「備品、器具備品」として処理をしましょう。
また、10万円以上の場合は、パソコンの場合4年間で減価償却する必要があるので、他の経費のように一括で経費計上できない点に注意してください。
この場合でも、「20万円未満」の場合は一括償却資産として、「30万円未満」で、なおかつ青色申告の場合は少額減価償却資産の特例として、それぞれ処理を行うことで、より税制上有利に処理が行えるので覚えておきましょう。
もちろん、業務以外で使用するなら按分をする必要があるので、明確な基準に基づき按分比率を設定してください。利用時間や利用日数に基づき按分をすると良いでしょう。
タブレット
パソコンの代わりとしても使えるタブレットは、パソコンと同じように処理しましょう。10万円未満なら「消耗品費」として、10万円を超えるなら固定資産とし、減価償却をしてください。
パソコンと同様に、按分を忘れずに。
Wi-Fiルーター
オンライン家庭教師にとって、インターネット回線は生命線です。無線でインターネットを使えるようにするWi-Fiルーターも、当然経費として計上できます。勘定科目は「消耗品費」として扱いましょう。
当然ですが、こちらも按分が必要です。業務時間に基づいて按分を行えば、合理的な按分比率の設定ができます。
家賃
オンライン家庭教師として働いている場合、家賃を経費として計上できる可能性があります。勘定科目は「地代家賃」として処理しましょう。
按分の方法は、「面積」「業務時間」に基づく方法が一般的です。
光熱費
オンライン家庭教師として働いている場合、光熱費のうち電気料金を経費にできる可能性があります。勘定科目は「水道光熱費」で、按分比率は床面積、業務時間で決定することが一般的です。
オンライン家庭教師の場合、授業時間が〇〇時間と明確に算出できるので、業務時間で按分する方法が良いでしょう。
インターネット料金
オンライン家庭教師の場合、インターネット料金は「通信費」として経費計上できる可能性があります。
家賃などと同様に、業務時間に基づいて按分をすれば問題ないでしょう。
Webサイトなどの費用
Webサイトの登録料や利用料を経費にできる可能性もあります。一例をあげると「Amazonプライム」の年会費が該当しますが、「諸会費」「支払い手数料」が勘定科目です。
Webサイトの登録料や利用料を経費にするためのポイントは、「業務に必要かどうか」をしっかり説明できるかどうかです。Amazonで家庭教師業に必要な物品を頻繁に購入するなら経費計上できますが、年間数十点のうち一点や二点だと、経費としての計上は難しいかもしれません。
また、按分が必要になる場合がほとんどなので、購入点数や購入額から按分比率を設定してみましょう。
「経費」を上手に使って賢く節税しよう
家庭教師に必要だとされる代表的な経費を紹介してきましたが、これら以外にも「これは経費にできるのか」と疑問に感じるものがあると思います。
基本的には業務に使用するものやサービスなら経費にできるので、賢く確定申告を行うことで節税を狙いましょう。