塾講師の正社員は生徒の成長を見守れるやりがいや、教室運営に直接携われる楽しさなど、ポジティブな一面があります。
その一方で、大変なこともたくさんあるため、「つらい」と現在進行形で感じてしまう方、あるいは「やっぱりつらいのかな」と疑心暗鬼になってしまう方がいても不思議ではありません。
そこでこの記事では、かつて塾で働いた経験のある筆者が「塾講師の正社員のつらさ」という点についてフォーカスしていきます。
つらい理由や対策方法を知って、「塾講師の正社員」という仕事を改めて再確認していきましょう。
塾講師の正社員はつらいことも多い。実態を正確に知っていこう
塾講師だけでなく、教育業全般は大変なこと、つらいことがたくさんありますよね。
特に塾講師は、下記のように「関わる人」が非常に多いため、よりたくさんのストレスを抱えてしまうものです。
- 本社、本部
- 保護者
- 生徒
- 同僚の社員
- アルバイトの講師
この利害関係者の多さや人間関係の複雑さこそが、塾講師の正社員という仕事の大変さを物語っています。
それと同時に、あまりにも複雑に絡み合ってしまっているため、「何が楽しくて何が大変なのか」が整理できなくなる可能性もあります。
結論:塾講師がつらい理由は「教育業とビジネス」が絡み合っているから
そこでまず結論として理解しておきたいのは、塾講師の正社員は「教育業とビジネス」が絡み合っているからこそ、大変でつらいと感じてしまいやすいということです。
例えば、教育業の代表例である「教師」は、公務員という立場なので「教育」だけにフォーカスすることができます。
といっても、教師は教師で膨大なタスクが生じるため、塾講師と比べて簡単、楽というわけではありませんが。
一方で、塾講師の正社員には教育業としての側面に加え、「教室を大きくする」「収益を上げる」といったビジネス的な側面も存在します。
だからこそ、塾講師のつらさは「教育業としてのつらさ」「ビジネスとしてのつらさ」の2つにわけられます。
この2つのつらさを整理することで、自分が「教育業」「ビジネス」のどちらにつらさを感じるのかが理解できるので、それぞれ解説していきます。
教育業としてのつらさ
まずは「教育業としてのつらさ」について見ていきますが、まずは下記のグラフをご覧ください。
こちらは、厚生労働省が令和4年にまとめた「令和4年上半期雇用動向調査結果」から引用をしたもので、それぞれの産業の入職率と離職率を示しています。
この中の「教育、学習支援業(グラフ中の右から4番目)」を見ると、下記のようにデータがまとめられていることがわかります。
- 入職率:14.8%
- 離職率:15.2%
ご覧のように、入職率を離職率が上回っているため、「仕事に就く人よりも辞める人の方が多い」状況であることがわかります。
なんとなく、「教育業界はブラック」という噂は耳にしますが、こうしてデータとして見るとよりイメージが抱きやすいはずです。
では、なぜ「辞める人の方が多い」のかについてですが、これは職種によって大きく異なるでしょう。
塾講師の正社員という観点で見ると、下記のような理由があげられます。
- 勤務時間が長い
- 勤務時間が夜型で身体に負担がかかる
- 保護者、生徒、講師などの対応が大変
人それぞれ辞める理由やつらく感じ理由はさまざまですが、まとめると上記のようになるでしょう。
勤務時間は正午から22時、23時まで。場合によっては0時を超える場合もあり、勤務時間の長さや夜型の生活が身体に負担をかけます。
場合によっては、講師が足りない場合などは、マネジメント側の立場の正社員が現場の講師として稼働をする必要も。
また、保護者、生徒、講師など、対応しなければいけない人が多いのもストレスになります。
こういったストレスをうまく処理できないと、人によっては「つらい」という気持ちを抱いても不思議ではありません。
ビジネスとしてのつらさ
教育業としてのつらさの次は、「ビジネスとしてのつらさ」について扱っていきます。
塾講師の正社員は、教育者であると同時にサラリーマンでもあります。つまり、教育について考えるのと同時に、「会社の利益」についても考えなければいけないということです。
この「矛盾」とも言える対立構造の中で生じる葛藤に、大変さやつらさを感じる方がいるはずです。
具体的な「ビジネスとしてのつらさ」を下記にまとめました。
- 本社、本部から降りてくるノルマ
- 保護者、生徒、講師に配慮しながら利益を上げるマネジメント
- 教育業という特殊な業種ゆえのキャリアの不安定さ
おそらく、多くの方が大変に感じるのが「ノルマ」です。
筆者は過去に塾で働いていた経験がありますが、夏期講習の時に「1人〇コマ以上」というノルマを課された経験があります。
コマというのは授業数のことで、要するに「夏休みに稼げるだけ稼げ」ということです。
これを受けて現場は、生徒に対して「ノルマありきの提案」をすることになります。言い換えれば、「必要でない授業までプランの中に入れる」ということです。
ここを簡単に割り切れる人なら問題ありませんが、葛藤が大きい人には少し厳しいかもしれませんね。
また、保護者や生徒、そしてアルバイトとして働く講師と、さまざまな方面に配慮をしながらも、教室として利益を上げていくマネジメント能力も求められます。
加えて、教育業界で精一杯頑張っても、特殊な業界であるゆえ、思うように「その後のキャリア」に活かせないのではないか、という不安もつきまといます(実際はキャリアにつながるので安心してください)。
こういったことを踏まえると、「お客さま(生徒と保護者)のことを考えながら(教育)利益を追求していく(ビジネス)」ことが大変さ、つらさをもたらすことが理解できると思います。
塾講師の正社員の「楽しさややりがい」についても知っておこう
まずは塾講師の正社員としてのつらい部分にフォーカスしてきましたが、決してつらいことばかりではないことは覚えておきたいポイント。
つらいことだけに目がいってしまうと、どうしても冷静な判断ができないものなので、「楽しさややりがい」についても改めて整理しておきましょう。
子どもたちや講師たちの成長を「特等席」で見守れること
塾講師だけでなく、教育業全てにいえることですが、子どもたちの成長を「特等席」で見守れることは、何にも代えられない価値を持っています。
よくあげられるのが「志望校に合格した瞬間」ですが、それ以外にも定期テストで良い点数を取ったり、褒められて嬉しそうにする姿を見たりと、そういった何気ない瞬間の中にもこの仕事の素晴らしさが詰まっています。
また、忘れてはいけないのが「講師の成長」です。
塾講師の正社員ともなると、複数のアルバイトの講師をマネジメントすることが求められますが、彼ら、彼女らの成長を見るのもまた、1つのやりがいだと言えるでしょう。
生徒や保護者から求められること
どこまで行っても、人間は1人では生きてはいけない生き物です。
しかし、一般的な仕事では、「誰かから強く求められる」ことはあまりない、あるいは実感できないのが現実。
工場勤務で機械的に手を動かしているだけでは、「この作業が誰かの役に立っている」ことが実感できないのは、まさにこれを強く反映しています。
その点、教育業は「求められる」機会が非常に多いです。
- 成績を上げてほしい
- 志望校に合格させて欲しい
- 努力ができるようになって欲しい
このように取り上げればキリがありませんが、直接的に、時に切実に求められるので、「信頼されている」「期待されている」という実感を抱くことができます。
これはストレスにもなりますが、それでもやはり、求められることは嬉しいものですよね。
自分の力で教室の規模が大きくなっていくこと
どのような形で塾講師の正社員として働いているかにもよりますが、場合によっては教室の運営を部分的にでも任されているケースもあるはずです。
そういった場合、自分の力で教室の規模が大きくなり、生徒の数や講師の数が増えていくことにやりがいを感じることもあります。
塾は「勉強を教える場所」であるのと同時に、「人と人が関わる場所」でもあるため、教室の規模が大きくなることは、「笑顔の数が増える」ことと同義。
つまり、「自分が誰かの役に立っている」ことをより強く実感できるということです。これもまた、塾講師の正社員だからこそ味わえることだといえるでしょう。
さまざまなスキルが身につくこと
塾講師の正社員は大変でつらいものですが、逆にいえば、「たくさんの経験ができる」ことでもあります。
改めて、塾講師の正社員の業務内容をまとめてみました。
- 生徒、保護者、講師への対応(コミュニケーションスキル)
- 教室運営で利益を上げる(マネジメントスキル)
- 新規顧客の獲得(営業スキル)
今はわかりやすく3つにまとめていますが、まとめると「コミュニケーション」「マネジメント」「営業」の3つのスキルが要求されることがわかります。
だからこそ大変ではあるのですが、仕事をしていくだけでこれらのスキルが身につけられるのは、自身のキャリアにとって良い影響を与えてくれることでしょう。
塾講師の正社員がつらいと感じた時の対策方法5選
ここからは、塾講師の正社員がつらいと感じた時の対策方法を5つ、経験者目線でわかりやすく解説していきます。
- 現場の「ホワイト化」を推し進める
- 責任を負いすぎない
- ノルマを必要以上に意識しすぎない
- 自分に合っているかを再検討する
- 転職や退職をして「教えること」にフォーカスする
いずれも大切なポイントなので、順番にチェックしていきましょう。
現場の「ホワイト化」を推し進める
昨今、「働き方改革」の名のもとに、あらゆる業種、業界で労働条件、環境の改善が推し進められています。
これは教育業界も例外ではなく、学校など公的な組織を含め、確実にホワイト化が進んでいることを、筆者の周りからも直接耳にする機会が増えてきました。
業務効率化や残業の廃止などを検討し本部に要請してみよう
例えば、筆者が現役の塾講師の時は、下記のような働き方が平然と行われていました。
- 授業後のサービス残業はアルバイト含め当然
- 教室を出るのが0時を過ぎるのはよくあること
- 休日に生徒の自習を教室で指導するのはルーティン
今だったら大問題になること間違いなしですが、実際に筆者が退職した後、アルバイトの講師と裁判になり、百万円単位のお金を塾側が支払った、とも聞きました。
このようなブラックな部分を少しずつ改善していき「ホワイト化」を図ることで、つらさが大幅に経験される可能性があります。
教室にいる人間が働きやすくすることは、マネジメントの1つでもあるので、改善できそうな部分を検討し、実際に本部など上流の人間に要請をしてみましょう。
責任を負いすぎない
教育業は責任を負おうと思えば無限に負えてしまう、非常に厄介な業種です。
「成績を上げなければいけない」「志望校に合格させなければいけない」など、生徒に関する責任に加え、「利益を上げなければいけない」などのビジネス的な責任も発生します。
この責任につらさを感じてしまう場合は、責任を負いすぎないことが大切です。
「塾講師ができること/できないこと」の境界線を明確にしよう
責任を負いすぎないためには、「塾(講師)ができること/できないこと」を明確にすることが大切です。
では、そもそも「塾ができること」とはどういったことでしょうか?
「成績を上げること」「志望校に合格させること」といったものをイメージするかもしれませんが、これは「できたらいいこと」であり、「できること」ではありません。
では、塾にできることとは一体なんなのか。答えはシンプルで「生徒に授業を提供すること」です。
つまり、まずは生徒に授業を提供できればそれでOK。成績や合格といったものは、講師の質や生徒のやる気など、あらゆる要因に左右されるため、執着し過ぎるのはよくありません。
このように、「責任の棚おろし」をすることで、自分のやるべきことがはっきりし、つらい気持ちが少し和らぐかもしれません。
ノルマを必要以上に意識しすぎない
塾は外から見ると、子どもがたくさんいて賑わいのある「良い場所」に見えるものですが、内側は「ノルマ」を課されることもある、大変ヘビーな現場です。
だからこそ、ノルマを満たすことを考えるあまり、教育業の本質である「教育」そのものがおろそかになってしまうこともあるはずです。
教育業は「口コミ」こそが最高の営業。生徒や保護者に宣伝してもらおう
筆者は教育業に10年以上関わっていますが、ビジネスである以上、利益を上げることは非常に大切です。
しかし、利益を上げることを一番に置いてしまうと、利益がどんどん上がりにくくなるという、パラドックスのような特徴があるのもまた、教育業の1つの特徴です。
なぜなら、結局のところ、教育業は「口コミビジネス」だからです。
筆者が塾で働いていた時、見込み顧客をターゲットにした営業戦略として、下記のような古典的な営業活動を行いました。
- ダイレクトメールの投函
- 小学校の校門で消しゴム入りのパンフレットを配布
- 塾の前での声かけ
言うまでもなく、このような営業活動は費用対効果が非常に悪いため、有効な手段ではありません。
そこで、こういった営業活動は一切やめ、その代わり下記のような取り組みを行ったところ、絶大な効果を発揮しました。
- 自習室担当の講師を1人配置
- 授業の質を改善するために講師間でミーティングを実施
- 生徒1人1人に担当の講師を配置
自習室担当の講師を1人配置、およびミーティングを実施するにあたり、講師1人あたり1時間〜2時間程度の時給がコストとして発生します。
しかし、「自習サポート」「授業の質の高さ」「担当制による授業外のサポート」という3点が非常に高い顧客満足度を誇り、まさに「客が客を呼ぶ」という最高の循環を作ることに成功。
結果として、在籍生徒数は1年半程度でおよそ3倍に増えることとなり、教室が本部から表彰を受けるという非常に高い成果を上げることができました。
このように、目先の利益を追求するのではなく、「塾としての価値」を追求するような取り組みが、結果的に利益につながってくれるのが教育業です。
ノルマを過度に気にすると、このような「塾としての本質」を見失ってしまうので、この点には注意を払った方がベターです。
自分に合っているかを再検討する
数学が得意な生徒がいれば、国語が得意な生徒がいるように、当然のことではありますが、人には向き、不向きがあります。
しかし、大人になるとこの当たり前のことを忘れてしまい、「頑張ればどうにかなる」と精神論で乗り切ろうとする方が多いです。
特に教育業に従事する人材は真面目な方が非常に多いため、他の業界よりも「努力」「忍耐」といった言葉が出てきやすい業界でもあります。
「塾講師の正社員」はビジネス色が強い。「教えること」が好きなら合わない可能性も
誤解を恐れずに言えば、塾講師の正社員は「ビジネス色が強い」です。当然と言えば当然ではあるのですが、サラリーマンなので会社が最優先である事実は絶対に動かせません。
「教えること」が好きで、塾の正社員になれば教えることにフォーカスできると考え、正社員になった、あるいはなろうとしている方もいるはずです。
しかし、現実はそうではなく、教育以外にもやるべきこと、考えるべきことが山積するのがこのお仕事。
もちろん、「講師」として予備校や塾に正社員として採用された場合、教えることにある程度集中できますが、それでもやはり、「教えること以外」の業務が発生してしまいます。
社会人として働くのですから、「やりたいことだけやる」なんてことはほとんど不可能です。
それでもやはり、「教えることにこだわりたい」という場合は、他の選択肢を検討した方が良いかもしれません。
転職や退職をして「教えること」にフォーカスする
さて、では「他の選択肢」とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
結論から言えば、転職をして「教えること」にフォーカスできる仕事に従事すること、それが最適解です。
おそらく、塾の正社員として働くことに違和感を感じる方は、下記のような希望を少なからず抱いているはずです。
- 教えること、子どものことを最優先に考えたい
- ノルマなど考えることなく自分のペースを大事にしたい
- お金よりもやりがいや楽しさを優先してQOLを上げたい
こういったものに当てはまる場合、「オンライン家庭教師」という働き方がマッチするかもしれません。
「オンライン家庭教師」で自由な働き方を実現しよう
サービス名 | まなぶてらす |
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運営企業 | 株式会社ドリームエデュケーション |
サービス開始 | 2016年5月 |
授業時間 | 50分 |
特徴 | 講師稼働率90%超え実績アリ |
私たちは、「まなぶてらす」というオンライン家庭教師サービスを運営し、24時間、全世界の子どもたちにオンラインレッスンを提供しています。
オンライン家庭教師を含むオンライン教育は、社会情勢が急激に変化した2020年以降に発展しましたが、「まなぶてらす」は2016年にサービスを開始した、言わば「オンライン教育の老舗」的な存在です。
講師目線での「まなぶてらす」の特徴を下記にまとめました。
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- 軌道に乗るまで営業研修でしっかりサポート
- 結婚手当、出産手当を完備
- 他の先生にすぐに質問できる掲示板制度で安心して稼働
かくいう筆者も「まなぶてらす」で現在進行形で働いていますが、これまで経験してきた塾、家庭教師とは明らかに一線を画します。
一言にまとめれば「教えることに集中できる」環境が作られていて、授業以外にやることがほとんどないのが本当にありがたいです。
また、各種サポートもしっかり用意しているので、オンライン教育が初めてでも安心して稼働できるのも強みの1つ。
教育業界にながら、「色々なことに疲れた」「純粋に教えることに集中したい」といった悩みを抱えている先生たちも、活き活きと活躍していますよ(筆者もそのうちの1人)。
「まなぶてらす」について気になる方は、下記の記事も参考にしてみてくださいね。
https://www.oshieru.work/manabuterasu-intro/
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まとめ
塾講師に限らず、正社員という働き方は「会社最優先」にて働く必要があるので、さまざまな葛藤が出てきてしまうものです。
特に塾業界は、教育とビジネスを両立しながら、継続して利益を上げ続ける必要があるので、その分だけ大変なことがたくさんあります。
記事で紹介した情報を参考にしながら、自分に合った働き方や価値観を見つけ、無理のない形で働くことが大切です。
また、これ以上働くのが難しいと感じた場合は、「教えること」にフォーカスできる仕事に転職するのも選択肢の1つですよ。