- オンライン授業に集中できない理由
- オンライン授業に集中するための効果的な対策
- オンライン授業のための理想的な環境づくり
場所を選ばず完全在宅で受講できるオンライン授業は確かに便利ですが、同時に注意すべきデメリットもあります。中でも「集中しにくい」点は多くの学生、生徒が悩んでいますが、なかなか効果的な対策が講じられないのも事実です。
オンライン授業が「便利なだけ」で終わってしまっては意味がないため、授業に集中して学習効果をアップさせることは大切なこと。
そこでこの記事では、現役のオンライン家庭教師が「オンライン授業に集中する」ことをテーマとして、集中できない理由や効果的な対策について解説していきます。オンライン授業に集中できないことに悩んでいる方、もしくは指導者の方は必見です。
オンライン授業は便利だが「集中しにくい」のも事実
オンライン授業は非常に便利な授業方法であるため、急激な社会情勢の変化により爆発的に普及しました。小学校、中学校、高校、そして大学などの教育課程だけでなく、塾や家庭教師などの教育サービスでも瞬く間に採用され、オンライン授業が教育の第一の選択肢になることも将来的に十分にあり得るでしょう。
そんな便利で魅力溢れるオンライン授業ですが、普及してから数年が経過した今、少しずつ負の側面が見えてきたのも事実です。当Webサイト「オシエル.WORK」でも、オンライン授業の疲労やカンニングなど、さまざまな問題を扱っていますが、「集中しにくい」のもまた懸念すべきポイントです。
オンライン授業が学習に悪影響を与える指摘も
では、具体的にオンライン授業は学習に対してどのような悪影響を与えるのでしょうか?
オンライン授業が普及してから3年目に入った2022年の2月現在では、以下のような問題点が浮き彫りになっているとの指摘があります。
- 学習意欲の低下
- 学習の質の低下
- 課題の量の増大
- コミュニケーションを取れる場の減少
- 孤独感、孤立感を抱きやすい
参考: 九州・山口の大学、授業形態模索続く 学習意欲低下指摘も
– 産経新聞
以上のような悩みを抱くことは、勉強や学習が本分の学生にとっては深刻な問題になりかねません。
オンライン授業の「負の悪循環」
そして、上記の悩みが原因となり、オンライン授業の「負の悪循環」に飲み込まれてしまう学生が多いです。その詳細は以下の通り。
そもそも、オンライン授業は教室における指導者の強制力が働きにくいので、生徒の自主性によって成立している部分が大きいです。したがって、学習に対して自律的に動ける生徒なら良いですが、中には受動的な生徒もいます。
そうした生徒の場合は、授業に上手く入り込むことができず、だんだんと授業そのものについていけなくなります。すると、「授業を受けていても分からない」と学習意欲が低下し、結果的に学習の質が低下します。
しかし、そんな生徒の思いとは裏腹に、指導者はオンライン授業で指導しきれない部分を「課題」で対応しようと、対面授業よりも多くの課題を出しますが、分からない授業の課題ほど苦痛なものはありません。
すると、風前の灯だった学習への意欲は完全に吹き飛びます。しかし、周りに学習に対する悩みを相談できる指導者はおろか、友達すらいないため、解決の糸口を見つけられません。
結果的に、ますます授業内容についていけなくなり、さらに学習意欲が低下し、手のつけられないところまで意欲、成績が落ちてしまいます。
こうなってしまっては、学校生活だけでなく人生そのものにも悪影響を与えかねないため、「オンライン授業に集中して取り組む」ことは極めて重要です。
オンライン授業に集中できない理由
では、そもそもどうしてオンライン授業に集中できない、しにくいのでしょうか?ここでは、以下の点を解説していきます。
- つまらない、分かりにくい
- 誘惑やノイズが多すぎる
- 教室の雰囲気や臨場感が感じられない
どれも大切なポイントなので、順番にチェックしていきましょう。
つまらない、分かりにくい
現在はオンライン授業が普及しつつある段階なので、多くの指導者はまだオンライン授業に対応、適応しきれていません。言わば、「対面授業をそのままオンライン授業でやっている」に過ぎないため、どうしても無機質で分かりにくい授業になりがちです。
毎日オンラインで授業を行っている身からすれば、対面授業とオンライン授業は天と地ほどの違いがあります。対面には対面の、オンラインにはオンラインの特徴が存在するため、同じことをやっていては生徒がつまらない、分かりにくいと感じるのは当然です。
したがって、「先生にもっと良い授業をして欲しい」と考える生徒が多いはずですが、先生や指導者の中でも40代、50代の方々は、パソコンがない中で育ってきた「非デジタルネイティブ世代」なので、授業のやり方はおろか「パソコンの使い方が実はよく分かっていない」といった方も存在します。
オンライン授業への移行は社会情勢の変化によって、言わばなし崩し的に生じたので、指導者側の準備が整っていないのは仕方ない部分もあります。だからこそ、このような事態になっているのでしょう。
しかし、これからの時代はパソコンやタブレットなどのICT関連機器を使えなければ「生きていけない」とさえ言える段階まで到達しているので、教育に従事する人間はICTに関する高い知識を身につけるべきです。
誘惑やノイズが多すぎる
このように、オンライン授業に集中できない背景には、指導者側の問題が隠れていますが、同時に生徒側にも大きな問題点が存在します。それは「誘惑やノイズが多すぎる」点です。
というのも、オンライン授業が普及する以前までの社会では、「勉強は学校でするもの」という共通認識がありました。逆に言えば、自宅は趣味や日常生活などの「勉強以外」をやる場所といった具合に、無意識のうちに学校とそれ以外で「棲み分け」を行っていたのです。
しかし、オンライン授業は「場所」という概念を取り払うため、棲み分けが通用しません。これまで勉強にあまり取り組まなかった自宅が「学校」の役割も担ったため、このマインドの切り替えに適応できず、自宅にあるさまざまな誘惑やノイズに打ち負かされる結果、「授業に集中できない」ことに悩んでしまうのです。
具体的には、自宅では以下のような誘惑やノイズが存在します。
- スマートフォン
- テレビ
- 同居する家族
したがって、オンライン授業に集中して取り組むには、このような誘惑やノイズを断ち切り、授業に集中できるような環境を整えることが大切です。その具体的な方法は後述します。
教室の雰囲気や臨場感が感じられない
オンライン授業に集中できない3つ目の理由に、「雰囲気や臨場感」があります。
ワイワイと賑やかな小学校の教室、仲の良い友達が近くにいる中学校の教室、就職や進学に向けて共に学ぶ高校の教室、そして名前も知らない人間と共に授業を受ける大学の教室。
幸い、今の時代の大人たちは、これまでの人生の中で上記のような教室の雰囲気や臨場感を感じながら授業を受けることができました。
しかし、オンライン授業が普及した今の時代は違います。教室は自宅に置き換わり、隣には友達がおらず、場合によっては自宅の広い空間の中、独りで授業を受ける生徒もいるはずです。
このような「想像するだけでも心が痛くなる」ような環境の中、授業に集中することは、決して簡単なことではありません。先生が教壇に立ち、周りに学友がいた教室の雰囲気や臨場感があったからこそ、授業に集中できていた側面もあるでしょう。
- オンライン授業は「負の悪循環」に巻き込まれやすい
- オンライン授業に指導者側が適応できていない
- 授業を自宅で受ける場合、誘惑や雰囲気が原因で集中できない
オンライン授業に集中するための効果的な対策
ここからは、オンライン授業に集中するための効果的な対策について解説していきます。
先述の通り、オンライン授業には集中を妨げるものが複数存在するため、しっかり対策を講じないと授業を受ける意義が失われることになります。
以下で紹介する内容を参考に、授業に集中しやすい環境を作り出してみてください。
必要な時以外、スマートフォンをいじらない
オンライン授業の大敵が「スマートフォン」です。スマートフォンには自分の好きなモノの情報が溢れていますし、仲の良い友達とも気軽に繋がれます。
また、本格的なゲームも楽しめるため、スマートフォンを持っていることは、単に携帯電話を持っていることに留まりません。従来であれば、パソコンやゲーム機など、別の端末が必要だったことがスマートフォン1つで行えるからです。
こう考えると、スマートフォンをいつでもいじれる環境が、いかに生活に影響を与えるのかが分かるでしょう。
スマホは子供の脳の成長を大きく阻害する
では、具体的にスマートフォンそのものがどのような悪影響を子供に与えるのでしょうか?
最も分かりやすいのは「脳」への悪影響です。脳トレブームを巻き起こした東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、スマートフォンの使用頻度で子供たちを分類し、3年間でどの程度脳が発達するのかを調べました。
その結果、スマートフォンを日常的に使用する子供では、本来大きくならなければいけない脳の体積が「全く増えていない」ことが分かったのです。
参考:“スマホ脳”で記憶力・集中力が低下…学力にも影響 – RKBオンライン
脳の処理能力は脳の体積に比例するため、この研究はスマートフォンをよく使う子供は「脳が正常に成長していない」ことを示しています。これだけでも、スマートフォンを子供が使うことの有害性が理解できるでしょう。
スマホで集中力が「ハッキング」される
また、授業中にスマートフォンをいじることは、当然、集中力を大きく奪います。
皆さんは「ドーパミン」と呼ばれる化学物質をご存知でしょうか?これは、脳内で分泌される「神経伝達物質」の一つで、物事に対するやる気や意欲、つまり「集中力」に関わります。
そして、このドーパミンは「新しい情報が得られる」「物事が上手くいく可能性が高い」時に分泌される傾向があります。これは、私たちの祖先が狩猟時代を生きている時、
- 未知の場所に食べ物を探しにいく
- 危険が及ばない場所や環境に身を置く
このような生存戦略を取るために獲得した機能の1つで、当然、この機能はまだ私たちの中に組み込まれています。
参考:「スマホ脳」で集中力が行方不明! 子どもにスマホ利用のマルチタスクをすすめない3つの理由 – ベネッセ教育情報サイト
そして、スマートフォンはドーパミンの分泌との相性があまりにも良すぎます。「新しい情報」は実質無料で、いつでもどこでも得られますし、ゲームでの成功やSNSでのいいねの獲得など、「上手くいく」ことも現実世界に比べたらたくさんあります。
したがって、スマートフォンをいじることでドーパミンの分泌が活性化し、「もっとスマホをいじりたい」となるわけです。逆に言えば、脳は「ドーパミンが分泌されない勉強なんてする必要ない」と判断し、結果的に勉強に集中できなくなってしまいます。
言わば、スマートフォンは脳内の集中力を作り出すシステムであるドーパミンの分泌をハッキングし、脳そのものをスマートフォンに依存させるのです。
スマホは「意思の力」では制御できない
このように、スマートフォンは子供(だけでなく大人)の脳の働きを大きく阻害し、学習に対する意欲も削ってしまいます。
では、どのように対策を行えば良いのでしょうか?
先述の通り、スマートフォンは脳そのものをハッキングすることで依存させてしまうため、「意志の力でなんとかしよう」では太刀打ちできません。子供は大人よりも衝動的な傾向があるので、なおさらです。
したがって、「強制的にスマートフォンをいじれなくする」ことが唯一の対策方法になります。
- 机の上においておかない
- ポケットから取り出す
- 電源を切っておく
このような「やりすぎ」と思われるようなくらいが対策にはちょうど良いです。それくらい、スマートフォンの脳へのハッキング能力は強いため、授業中のスマートフォンの取り扱いには細心の注意を払いましょう。
机の上を整理整頓する
スマートフォンと関連する部分がありますが、「机の上の整理整頓」もオンライン授業に集中するために大切なことです。その理由として、ここでは以下の2点に注目します。
- 他のものに気を取られないようにするため
- 探しものを出来るだけ減らすため
机の上にモノが溢れていると、授業中、もしくは家庭学習中に、さまざまなモノが目に入ってきてしまいます。その結果、スマートフォンに触りたくなったり、マンガを読みたくなったりと、脳に不必要な情報がインプットされ、集中力を削ぐ要因になるのです。
また、机の上を整理することで、モノがどこにあるのかを把握しやすくなり、探し物を減らすことにもつながります。授業中に必要な教科書や問題集がすぐに用意できないと授業の妨げになってしまうため、意外と大切な部分です。
一般的なビジネスパーソンは、1年間に150時間以上、探し物をしているという試算も出ているため、限りある時間を有効に使うという意味でも、机の上、ひいては部屋を綺麗に保つことは大切です。
参考:「きれいな机がずっと続く」整理整頓よりもハードルが低い”ちょっとしたコツ” – PRESIDENT Online
騒音はシャットアウトする
スマートフォンや授業に必要のないものを目に入れない「視覚」面での対策は大切ですが、同様に「聴覚」面での対策も重要なポイントです。
筆者が毎日オンライン授業をする中で、同居している家族による騒音が非常に気になります。
- 家族同士の世間話
- 家族同士の喧嘩
- テレビやゲームの音
パソコンのスピーカーを介してこれらの音を聴いていても「うるさいなぁ」と感じてしまいますが、直接聴いている生徒本人はもっとうるさく感じるでしょう。授業への集中を阻害しているのは言うまでもありません。
したがって、同居している家族による一定の配慮も、オンライン授業に集中するために大切なことだと言えます。
「ノイズキャンセリング」対応のイヤフォンも視野に
一方で、自宅の構造や同居している家族の事情などを考慮すると、どうしても音が出ることを防げないこともあるでしょう。そんな時は、外部の音をシャットアウトできるノイズキャンセリング対応のイヤフォンがおすすめです。
特に、外部の音を打ち消すように特殊な音をリアルタイムで流し続ける「アクティブノイズキャンセリング」対応のイヤフォン、ヘッドフォンは、周囲の音が全く気にならなくなります。
少し値は張りますがその効果は絶大なので、検討してみてください。
分からないところを「見える化」する
オンライン授業だけではなく、対面授業でも同じことが言えますが、「分からない授業は面白くない」ため集中することができません。
先述の通り、集中する時に分泌されるドーパミンは、「新しい情報が得られる」「物事が上手くいく可能性が高い」時に多く分泌されるので、「分からないから何も知ることができない」「分からないから問題が解けない」状態では全く分泌されないのです。
さらに、オンライン授業では、先生や指導者が教室のようにひとりひとりの様子をつぶさに観察できるわけではないため、どの生徒がどのくらいの習熟度なのかを直感的に把握できません。
したがって、分からないが放置され、どんどんどんどん取り残されてしまい、授業に集中できなくなる負の悪循環が進んでいきます。
付箋やメモを活用しよう
学校などの集団授業において、分からないとところを逐一質問するのは現実的ではないため、自分でなんとかせざるを得ない場面が多くあります。
したがって、授業の後に復習ができるよう、分からないところの「見える化」が効果的な対策になります。
具体的には、「付箋やメモ帳」を活用する方法があげられます。ペンで直接、分からなかったり分かりにくかったところを、
- 〇〇の解法がわからない
- 〇〇の用語の意味が分からない
- 〇〇が全く分からないので質問
このような形で「見える化」すると、後で復習する、もしくは質問をする時に役立ちます。
オンライン授業に必要なモノを過不足なく揃える
オンライン授業に集中できない背景には、必要なモノが揃っていないことがあるかもしれません。オンライン授業の質は、良くも悪くも使用する端末や機器などに大きく依存するため、ストレスなく授業が受けられる環境を整備する必要があります。
以下に、オンライン授業に必要なモノを列挙します。
- 端末(パソコン、タブレット、スマホ)
- インターネット回線
- 音響機器(イヤフォン、ヘッドフォン、マイク)
- 映像機器(自撮りカメラ、手元カメラ)
- その他快適に授業を受けるためのアイテム
これらのものを過不足揃え、快適に授業が受けられる環境を整備しましょう。具体的にどのようなモノが必要なのかは、以下の記事を参考にしてください。
https://www.oshieru.work/online-lesson-necessary/
疲労が蓄積しないように工夫する
オンライン授業は何かと疲労が溜まりやすい授業スタイルです。
- 長時間同じ姿勢を維持する体への影響
- 長時間画面と睨めっこする目への影響
- 友達や先生とコミュニケーションを取れない心への影響
こういったことが原因で、心身ともに疲労が蓄積すると、授業に集中できないのはもちろん、他にも肉体的、心理的な問題が生じる可能性が高いです。
オンライン授業特有の疲労対策を万全に!
したがって、オンライン授業特有の疲労に対する対策を万全に行い、常に心身ともにフレッシュな状態で授業に臨みましょう。
例えば、体の疲労は人間工学に基づいて開発されたワークチェアや、高さを調節できる昇降機能付きのデスクで効果的にケアできます。目の疲労はディスプレイのサイズを大きくしたり、目薬の使用で一定の効果があるでしょう。
また、心の疲労はオンライン上での他人との交流や、家族や友人、先生に遠慮なく頼ることで、心の栄養を取ることが大切です。
オンライン授業特有の疲れに効果的な対策方法について解説した、以下の記事も参考にしてください。
https://www.oshieru.work/online-lesson-fatigue/
集中力を維持しながらオンライン授業を受けよう
オンライン授業は集中力を阻害するものが多く、集中できないことに悩む生徒が多く存在します。
指導者が生徒が集中しやすいように配慮することも大切ですが、生徒側の努力も同様に必要です。記事で紹介した情報を参考に、より集中しやすい環境を整備して、オンライン授業の学習効果を高めましょう。